私の経験談

初めての出産だった私は、死産の分娩がどのようになるのかを全く想像できず、ただただ不安でした。お腹の中で赤ちゃんが亡くなって数日経っていたこともあり、赤ちゃんがどのような状態で産まれてくるのかもわからず、正直なところ会いたいけど会うのが少し怖い気持ちもありました。

入院2日目から少しずつ子宮頚管拡張の処置をしていたところ、入院4日目に分娩となり、やっと赤ちゃんに会う事ができました。私の胸元にやってきた赤ちゃんはやはり産声をあげなかったけれど、ただ悲しいだけのお産ではありませんでした。元気に産んであげられなくて申し訳ない気持ちで涙が溢れたけれど、自分の赤ちゃんに会えたあの時の喜びはずっと忘れられません。

しかし、徐々に分娩前より更に大きな悲しみが押し寄せてきました。赤ちゃんに会えて、更に愛おしくなって手放したくない気持ちが強くなったからです。赤ちゃんに出会えた喜びとすぐお別れをしなければいけない悲しさ、いろいろな感情が混ざり複雑な心境でした。ゆっくり時間をかけて心も準備をしたいけれど、赤ちゃんは日に日に体の状態が悪くなっていきました。そのような状況でも市役所への届出や棺や火葬の準備などやらなければならないことも多く、本当に心も体も辛い時間でした。みなさんも、まずは出産後のお母さんのお体を最優先にして、無理をせずに準備を進めてください。

母体と胎児の状況や病院の方針などで処置や分娩は異なると思いますが、こちらのページでは私の入院~出産(無痛分娩)や退院までの経験談をお伝えしたいと思います。また、産まれた赤ちゃんの体の状況についても詳しくお伝えします。


【 後期流産・死産について 】

妊娠12週以降で赤ちゃんが亡くなってしまった場合は、手術によって胎児などを取り出すことが困難であるため、子宮頚管拡張の処置をしたり、陣痛促進剤をつかって陣痛をおこして分娩する必要があります。

詳しくは日本産婦人科医会のホームページをご参照ください。

※後期流産(死産)の処置

https://www.jaog.or.jp/note/5%ef%bc%8e%e5%be%8c%e6%9c%9f%e6%b5%81%e7%94%a3%e3%81%ae%e5%87%a6%e7%bd%ae/


※母体や胎児の状況や病院の方針などにより、分娩方法や出産までの処置などは人それぞれ異なります。

【 私の入院~出産までの流れ 】

ある朝、胎動を感じないため病院を受診したところ、赤ちゃんの心拍が止まっていました。

数日前から少し胎動が落ち着いてきた気がしていましたが、胎動カウントをしても問題なく、前日の夜も元気すぎるくらいの胎動があり、ほっとした翌日のことでした。

そのまま入院になり、病室で安静にしていました。翌朝に再度エコーをして子宮内胎児死亡と確定。(この時点では原因は不明でしたが、出産後に臍帯巻絡が原因とわかりました。)採血や子宮頚管を広げる処置を少しずつ行い、数日後に陣痛促進剤と硬膜外麻酔を利用して無痛分娩で出産しました。

(入院~出産)

入院初日 子宮内胎児死亡と宣告。帰宅できずそのまま入院。

入院2日目朝 再度エコーで子宮内胎児死亡確定。1度目の子宮頚管拡張の処置。(ダイラパンを2本入れる)

入院3日目夕方 2度目の子宮頚管拡張の処置。(メトロを入れるもお腹が張ったため抜く)

入院4日目朝 3度目の子宮頚管拡張でメトロの処置後、分娩室で点滴しながら朝食。昼過ぎに陣痛促進剤を入れて少しずつ促進剤を増やしていく。お腹が張る間隔が徐々に早くなり子宮口がある程度開いたため、陣痛に耐えながらエビのようにお腹を抱えるように背中を丸くし、動かないように押さえられながら無痛分娩のための硬膜外麻酔を入れる準備をする。(準備が完了すれば、普通の体制のまま麻酔を追加できる。)

麻酔が入って痛みが和らいだことでリラックスしたからか、今度は肛門付近の痛みがだんだん強くなる。夫にテニスボールでグッと押してもらったり、ソフロロジーという呼吸法で痛みに耐える。だんだん我慢できなくなったのでナースコールを押すと、駆け付けた助産師さんたちがビックリ…既に子宮口が全開だったそうです。(私のように麻酔を入れたことで早くお産が進む場合もあれば、麻酔を入れるタイミングによっては遅くなってしまう場合もあるそうです。肛門の痛みは便が出るような感覚だったため、つい恥ずかしくて我慢してしまったのですが、あの時ちゃんと呼んでいれば先生方も慌てなかったと思うので申し訳ない気持ちでした。)

なんとか麻酔を追加してもらい、痛みが和らいでいる状況でソフロロジーの呼吸法を10回くらいしたところ、スルンと出る感覚があり、赤ちゃんが産まれました。(陣痛促進剤を入れてから約3~4時間後で出産となりました。)

初めての出産が無痛分娩だったため痛みの比較はできないのですが、子宮口がある程度広がるまでの陣痛の痛みや産む時の痛みがあったものの、分娩時間も短く、分娩後の体力の回復が早かったです。ただ、死産でも普通の分娩と同じリスクがあるし、麻酔を使えばそのリスクもあります。どのような出産も命がけなのだと改めて感じました。

赤ちゃん誕生後は、少し体を拭いてもらったあとに胸の上で抱っこしてカンガルーケアをさせてもらえたのがとても良かったです。その後、一旦助産師さんに赤ちゃんを預けて、赤ちゃんの体のケアをしてお着替えをしておくるみに包んでもらい、写真撮影の時間を設けてもらいました。無痛分娩だったため、足の感覚がもどるまで分娩室(LDR)で体を休め、産後の処置をしてもらったり、食事をとったりして過ごしました。

病院の配慮でゆっくりと過ごさせてもらったため、病室に戻る時には夜になっており、赤ちゃんとはLDRでお別れしました。お母さんと離れたあと、赤ちゃんは体の状態を維持するために保冷された場所で一人眠ることになります。次に会えるときには体は冷たくなってしまうので、温かい赤ちゃんをたくさん抱っこしました。

【 出産後の赤ちゃんの様子について 】

当時の私は、「死産」と聞いた時に、赤ちゃんと対面するのが嬉しいはずなのに怖い気持ちもありました。心拍が止まってから出産日まで数日経過していたこともあり、どのように産まれてくるのかを全く想像ができませんでした。

赤ちゃんの週数や状況などで異なりますが、私の赤ちゃんの場合、顔は全体的に赤っぽい顔色で、血色が悪い部分が少し紫っぽくなっており、唇は黒い色をしていました。顔から下は肌色で、お腹の中にいたこともあって温かくて柔らかくて、怖い気持ちが吹っ飛んでしまう程とてもかわいかったです。羊水の中にいたため顔はむくんでいましたが、日に日にむくみがとれていきました。

温かい赤ちゃんを抱っこできるのは、産後のわずかな時間だけです。その後は体の状態を維持するために、病院の保冷室などで預かってもらうため、次に会うときには冷たくなってしまいます。沐浴をすることでまた温かい赤ちゃんを抱っこできますが、やはり体の状態を維持するためにも長時間一緒に過ごすことは難しい状況でした。

また、肌を保湿するためにオリーブオイルを塗り、体液(血)が鼻や口から垂れてしまうのを防ぐために脱脂綿を鼻や口の中に入れました。鼻や口から体液が出てしまうと、体液がついた場所が徐々に黒ずんでとれなくなります。なるべく早く処置をしてあげる方が状態を維持しやすいと思います。赤ちゃんは産まれたときから口を開けていたのですが、脱脂綿を入れてしばらく口が閉じるような体制で抱っこしていたところ、寝かせても口を閉じられるようになりました。

※これは自己流です。後日「エンゼルケア」というものがあると知りました。

◆YouTubeにて日総研という企業が動画を掲載していますので参考にしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=zDEUDW_m6lw

【 私の出産翌日~火葬までの流れ 】

入院5日目(出産翌日) 朝、エコーで子宮内と悪露の状況を診察⇒経過良好で翌日退院が決まる。午前、夫が市役所に死産届を提出。午後、沐浴やお着替えなどのふれあいの時間を設けてもらう。

入院6日目(出産翌々日)午前、退院。病院の産着を返却するため、用意した洋服に着替えさせる。夫が葬式業者に行き、事前に注文した棺とドライアイスを車に積み込む。病院では納棺をせずに、私が赤ちゃんを抱っこして裏口から乗車。帰宅する途中で花を購入。ゆっくり自宅で過ごし、両親にも赤ちゃんとふれあいの時間を設ける。

退院翌日の朝 納棺の準備をする。※朝早いのでお花は前日に購入しておく。9時半頃に火葬(1時間程)し、収骨後に帰宅。※赤ちゃんのお骨を残すために、火力が弱い朝に行う。


赤ちゃんと出会えた喜びと、火葬してお別れしなければならない悲しみで、産後はとても複雑な心境でした。出産後に赤ちゃんと過ごせる時間がもっとあるのかと思っていましたが、病院の保冷室で預かってもらっていても、赤ちゃんの体の状態がどんどん悪化していくのを目の当たりにし、なるべく早く火葬をしてあげたいと思うようになりました。

出産後、火葬日を決めて斎場に予約の電話をした後、夫が市役所に死産届を提出しに行きましたが、死産届の提出場所は戸籍届出窓口のため、周りには赤ちゃんを抱っこした幸せな家族ばかりでとても辛かったと夫は話していました。辛い思いをして手続きをしても、死産届には赤ちゃんの名前を記入するところはなく戸籍には載りません。(妊娠12週未満の赤ちゃんの場合は死産届の提出は不要です。)こんなに辛く悲しい現実があるなんて、自分が経験するまでは知りませんでした。

また、赤ちゃんの大きさによっては病院でエンゼルボックスという紙の棺を用意してくれますが、サイズに限りがあるため赤ちゃんが大きい場合は自分で棺を用意しなければいけません。(病院に発注をお願いできる場合もあり)

インターネット上ではかわいらしい子供の棺が販売されていますが、出産後でないと正確な赤ちゃんの大きさがわからず、どのサイズを選べば良いのか悩んでしまいました。私たちは出産後のネット購入では配送が間に合わない可能性もあったため、近くの葬儀会社で購入することにしました。病室から複数の葬儀業者に電話をして、どこでどのサイズをいくらで購入できるかを事前に調べておき、出産後に改めて電話でサイズを伝えて購入しました。骨壺に関しても事前にかわいいものを購入したかったのですが、骨壺の大きさがわからなかったので斎場で販売している一般的な白い骨壺にしました。収骨時にお骨の量を見てから骨壺のサイズを選べました。(斎場によって対応が異なるかもしれません)更に小さくなった赤ちゃんのお骨を抱きかかえて帰宅しました。

火葬当日についての経験談はこちらのページへ⇒赤ちゃんのお見送り①

水子供養についての経験談はこちらのページへ⇒供養・納骨のこと

子宮内胎児死亡で入院してから火葬までの7日間、今まで経験したことがないほどの深い悲しみを感じていました。

でも、赤ちゃんを出産した時や抱きしめているときの喜びや幸せもたくさん感じることができました。

お空に赤ちゃんを見送ったあとも毎日のように涙を流して、悲しくて辛くて苦しい日々が続きました。

でも、お空の赤ちゃんを想うたびに、とても愛おしい気持ちや優しい気持ちになれている自分に気づきました。


まだまだ悲しい気持ちになる時の方が多いですし、この悲しみを乗り越えることはできないですが、

赤ちゃんが私たちのもとに来てくれた喜びや幸せを感じながら、

これからも心の中にいる赤ちゃんと一緒に毎日を過ごしていきたいと思っています。